2004年08月24日

形見分け

彼の部屋の荷物整理が終わったと、
親御さんから連絡を受けたのは土曜のこと。
一人暮らしでも一年以上生活していただけはあって、
思ったよりも多くの荷物になっていたらしい。
几帳面にダンボールに分類された生活用品。
そして、事情を知る人にしか分からない遺品。

他の人から見れば、ただのガラクタの集まり。
でも、そのひとつひとつが、あたしにはトクベツ。
全てが、彼が其処に在った記憶を吸っているものだから。


出前寿司の伝票。
日付は、あたしが彼に会いに行った初日だ。
お寿司なんて贅沢だとエンリョするあたしをなだめて、
彼が強行突破の勢いで頼んでくれたっけ。
「無理したんだろうなぁ」と、親御さんが苦笑いする。
あたしもそう思いマス。でも、うれしかったよ。
横目で彼の遺影を見て笑う。

ジャスミン茶のペットボトル。
旅行中にあたしが買って飲んでいたら、
彼もつられて飲み始めるようになったもの。
ジャスミンは好き嫌いがあるから勧めなかったのに、
あたし達は嗜好もそれなりに合ってたらしい。

さるぼぼちゃん×2。
ひとつは、あたしが彼の部屋に置き去りにした紺色の人形
こっそり置いて帰るつもりだったのに、気づかれちゃった。
もうひとつは、あたしが持っていた黄色の人形。
告別式でも、数珠の代わりにずっと握り締めていた。
いま、ようやくふたつ揃って、赤い糸で結ばれている。

香水。
彼が好んで纏った香りは、ヨウジ・オム
彼とあたしが気に入った香りは、ドライクリーン。
どれを取っても、彼が封じられている気がする。

そして、お洋服。
コムデギャルソンの20年来の定番の白シャツ
細い彼の身体にはぶかぶかなんだけど。
背中のドレープをたなびかせる姿は、とても素敵だったね。
あたしの『少年』そのものだった。
他にも彼の生きがいだった宝物が、たくさん、たくさん。
所狭しとクローゼットを占拠している。
親御さんは、あまり知らない。
お洋服に込められた、彼なりの哲学や美学。
薀蓄を並べるのは彼の仕事だったはずなのに。
代わりに、あたしが彼の言っていたことを繰り返してみる。
物覚えの悪いあたしなのに、
彼の言ったことだけはよく覚えていることに感心。

あたしが男だったら持って帰りたいけど、
サイズが合わないので、お洋服は断念することに。
「好きなものを持っていっていい」というお言葉に甘えて、
最期に彼が身につけていたイッセイのベルトと、
香水をいただいていくことにした。

つらくなるから、
本当は形見は無い方がいいのかもしれない。
でも、今はまだ、彼を近くに感じたい。

posted by る・れくま at 23:50| 神奈川 曇り| Comment(4) | TrackBack(0) | 足跡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんだか読んでて悲しくなって泣いちゃいました。
る・さんの辛さの1%もわかんないんだろうけど、
一読者としてこれからのる・さんを応援しています。
Posted by jk at 2004年08月25日 01:00
うわぁ・・・泣かしちゃいましたかー。
痛い文しか書けずにごめんなさい。。。

応援ありがとうございます☆
jkさんのやさしいココロが傷つかない程度に、
今を伝えられるようになりたいですねぇ。

Posted by る・れくま at 2004年08月25日 23:10
コムデギャルソン・・・
私が、もしやと予想していた人と重なってしまいました。
どうしよう、何故かしら涙がとまりません。
更新されないブログ。
コメントの返事がかえってこないブログ。
でもどこか、信じられず通っていたブログ。

どうしよう、私達、生きてるんですね。
深く知らなかったけれど、目を背けてた事実を受け止めてしまったようです。

る・ちゃん、本当に辛かったでしょう。

私達、生きていきましょうね。

言葉がみつからず、ゴメンね。
Posted by きみえ。 at 2004年08月28日 12:28
予想、、、当たっちゃいましたか。
私の記事ではあえてHNは使わずに、
彼であり、君であり、貴方であり、“A氏”でした。
彼は、きみえさんの詩が大好きでしたヨ☆
きみえさんの詩を知ってから、
彼は心の内を表現することを覚えたんです。
ようやく、素直になって。。。
そうですね、生きてるんですね、私。
本当にありがとうございます。
強く、生きていきます。

今更なのですが、
私の記事から彼のブログへトラバしたり、
ちょこっとリンクを張ってみることにしました。
二度と更新されることは無いけれど、
彼の文章を読んでくれる人が少しでもいるなら、
思想だけはずっと生き続けるのかなぁと。

それが彼に対して、
あたしにできる最後のことかと思います。

Posted by る・れくま at 2004年08月29日 13:21
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/487934
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック